調査概要

工事前調査【事前調査】

公共事業の場合、中央用地対策連絡協議会により定められた「工損調査標準仕様書」にのっとり、「公共事業に係る工事の施行に起因する地盤変動により生じた建物等の損害等に係る事務処理要領」に基づき、近隣家屋の現状調査を行います。民間工事の場合、特に規定はありませんが、マンション建設工事や大型施設工事においては、これに準じた形で近隣家屋調査を行うことが一般的となっています。
この背景には、戸建の多かった住宅地のマンション化や市街地へのショッピングモールやアミューズメントなどの大型施設が進出し、工事に起因する家、工作物の被害に関するトラブル頻度が高まったことにあります。
近隣家屋調査は工事中に係る被害など何か問題が発生した場合、調査資料を、施工業者、近隣家屋の双方が所有確認する事によって被害の状況や起因を判断する基準とするものです。
通常第三者である民間の調査会社が実施します。調査内容は家屋内外(内外壁、天井、床、基礎など)、工作物(塀、ガレージ、花壇、物置等)の現況または損傷状況の写真撮影、 柱、床の 傾斜測定を行ないます。
また、小規模工事の時は外部調査だけ、プライバシーに関する事情により一部辞退などのケースがあります。 工事に関連する調査としては、このほかに人の健康・生活環境に影響を及ぼす可能性のある、振動、騒音、地盤変形、井戸、酸欠、植物調査などが工事の種類や規模によっては実施されています。
調査範囲については、道路工事の場合、施工する沿道家屋が対象となります。 マンションなどの建築工事の場合は通常、隣接する 1 周り目~3周り目が対象となり工事規模などによって異なります。

調査項目

■ 家屋の全景
■ 内壁・天井・床の亀裂
■ 内壁と柱との隙間
■ 廻縁・巾木などの隙間
■ タイル張り部分の亀裂及び目地の状態
■ 柱・塀などの1m当りの傾斜、敷居・床の水平
■ 建具の建付け状況
■ 外壁モルタル、タイルの亀裂及び隙間
■ 叩き、布基礎の亀裂
■ 土間の亀裂及び隙間
■ その他、現在の家屋の状態
※調査は、2人1組で行うのが一般的です。

事後調査

事後調査は、状況に応じて事前調査と同様に写真撮影を行う場合と、事前の資料に基づき目視確認を行う場合があります。また、権利者【近隣家屋の居住者及び所有者】の判断により行われない場合もあります。

・調査の現状
工事に伴う家屋調査の費用は工事を行なう側が受け持つのが一般的です。これは工事という責任所在の点から当然と考えられています。だからといって家屋調査は工事を行う側に立ったものではありません。不安なところや不明な点は、調査員に都度確認することが必要であるといえます。調査員の説明によって過剰な不安が解消されることもありますし、気づいていなかった注意点をみつけることもあります。家屋調査の資料についてしっかりと調査した資料は、工事被害対策の為だけのものではありません。建物の傾き状況や各所の損傷状況が判るこの資料は、現在の住まいの状況記録でもあります。我が家を永く大切に使うための参考資料でもあります。